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青山の家
最初にお見せして頂いたのは
カバードポーチのウッドデッキの写真。
『これが長年の夢です。とにかく大きなデッキがほしい。』
愛知県のどちらかといえば郊外で
なかなかのアメリカナイズ。
大きなウッドデッキと日々の暮らしを
どう結びつけるか、それを課題として
4LDKを計画致しました。
愛知県西春日井郡 2016年完成
敷地面積:200.41㎡ (60.62坪)
建築面積:105.18㎡ (31.82坪)
延床面積:142.66㎡ (43.15坪)
構造・規模:木造2階建
家族構成:夫婦+子供2人
『実家の横に空地があってそこに建てたいんです。』
ただ。。。
『鰻の寝床みたいな場所を上手に使えるか…』
本計画のキーワードは
『ウッドデッキと鰻の寝床』となり
ジャンクで灰汁が強いものがお好きなご主人と
清楚で上品なものがお好きな奥さんとの
笑顔の絶えない打合せの始まりです。
まずは敷地環境の整理から
東側は
ご勇退された方々が
おいしい野菜をつくっていらっしゃって
その先には高速道路が
南側には
単身者の賃貸アパートと戸建住宅が
壁のように立ちはだかり
西側の母屋には
おじいちゃんとおばあちゃんとひいおばあちゃんが
住まわれています。
敷地のすぐ近くには
今後変わらぬであろう田園風景が広がり
気持ちの良い西風が毎日のように吹いています。
せっかくみんなで住むのだから
4世代が集まる場所があったらいいなぁ
とか
田んぼからの風が畑に抜けたら気持ちいいなぁ
とか
敷地を歩いて思いを馳せて
そうだ
『ウッドデッキをみんなで使おう』
というコンセプトが決まります。
たくさん頂いていたご要望も
ウッドデッキからリビングに行けて
リビングから空が見えるように吹抜けつくって
その吹抜けで家族の場所をつなげて
キッチンから庭で遊ぶ子供が見えてと
これぞ数珠つなぎと言わんばかりになって
計画がまとまり
皆様にご納得して頂くことができ
プランが決まります。
『寝床』の部分は
嫁ぐ立場の奥さんのために
篭れる巣のような場所として繕って
水回りを固めて
見せたくないもの隠せたりして
ちょっとしたプライペートテラスの役割も担って
上手に使えたと思います。
母屋が隣なので何回も模型をつくって
ちゃんとお互いの窓の位置を確認して
床の高さも目線の高さを意識して合わせたり
ずらしたり
隣同士で住まうということを
改めてゆっくり考えさせて頂きました。
プランに関しては
ご主人さんも奥さんも考え方が同じであるものの
仕上げ材料をどうするかは
8割近くが異なるご意見で
『自然の優しい材料を使って、きれいなところで子供を育てたい。ものが少ないのが理想です。』と奥さん
『そうですよね!物が多いと疲れますから!』
『モダンが嫌いです。きれいすぎてすぐに飽きる。ちょっとクセがあった方が末長く愛せる家になる』
とご主人さん。
『ごもっともです!荒々しさも大事です!』
『そうですよねぇ。。。』
このやりとりからヒントになりそうな発言に聞き耳立てて
取って捨てて選択して
歩み寄れるようなご提案をたくさんさせて頂き
歩み寄れるようにお話し合いして頂いて
何とか着工を迎えたわけです。
この計画が始まってから
いつも支えて下さったのが
母屋に住まわれるご両親です。
いつも気丈に振舞われるお二人で
『楽しみだねえ!楽しみにしとるよ!』
と声を掛けて下さり、地主さんでもあるがため
色々な手続きをお手伝いして頂かなければならない事も多く
その度に
『何でもすぐに言ってくれ!何でもやってやるから」と
常に助けて頂きました。
解体初日
そんなご両親が普段見せられない神妙な面持ちで
ぽつりと
『やっぱり寂しいもんだな
一生懸命働いたお金でつくって
家族で過ごした場所だからな』
とおっしゃられたこと
今でも胸に刻んでいます。
この寂しさを乗り超える住まいを
この土地につくらなければ
自分は建築士として仕事をしたことにならないと
背中を強く叩かれた気分でした。
解体して整地が終わると
地を鎮めます。
ご主人さんは自他共に認める
『雨男』で
地鎮祭は霧雨の中
執り行われ
工事の無事を祈願致しました。
敷地はもともとが畑で
在来の地盤に土が盛られていましたので
表面の土1m分だけを改良する
表層改良工事を行いました。
この表層改良は
セメント系の固化材と土を混合攪拌して
地面を硬くするのですが
地盤調査の結果
現場には黒ボク土が堆積していて
この土は酸性を帯びることがあり
アルカリ性であるセメント系固化材は
土の酸性が強いと中和されて
その働きが弱まってしまいます。
どれぐらい酸性の土なのか
数ある固化材の中で
どの材料でどのくらいの割合で配合すれば硬化するのか
現場の土を採取して持ち帰って頂き
配合試験をして頂きました。
試験結果は
施工会社の保証範囲に入る
十分な強度が確認でき
一安心です。
掘って、混ぜて、締めて固めて
丁寧に改良して頂き
基礎工事に入れます。
防湿シートを敷いて
構造計算書に基づいて
基礎の配筋
コンクリートのかぶり厚を
監督さんと職人さんとみんなで一緒に確認して
コンクリートを打設して
土台を敷いたら
準備完了です。
しつこいようですが
「雨男」で有名なご主人さん。
二日前まで晴れだった天気予報が
雨に変わるほどの力をお持ちで
貴重な休みはずらせないご多忙な方ゆえ
小雨の中上棟式決行です。
『設計事務所に頼んで本当に良かった。』
屋根が出来た時
ぼそっとおっしゃったその言葉
今も糧になってます。
上棟式が無事終わって大工工事スタートです。
建物に囲まれながらも
隙間があって
そこをぬえるように熟慮した窓も
想像していた景色が見えて
今は拓けた隣の畑が
例え住まいに変わろうとも
上から
朝日を入れれば良いし
その優しい光は
リビングにだって届くんです。
『青山の家』の天井は
ラワンベニヤです。
本来の用途は下地。
床の下地や壁の下地、古い家の押入れなんかに
貼られている材料です。
ですが
ざらざらの表面にやすりをかけて
ちゃんとしたオイルなど塗れば
一端の仕上げ材へと変貌をとげます。
しかし一枚千円しない
建築では安い部類に入るこの材料は
ただただ貼ればいいわけではなく
大工さんの不屈の努力が伴います。
下地であるがため色のばらつきがあり
できるだけ同じ色を集めて、木目も揃えて
3mmの目を透かして違和感を軽減し
さらに
その目の部分の下地が見えないように
木でできたテープを貼って
やっと綺麗に納まります。
天井を貼り終えると
まだ?まだ?と催促されておりました
みんなが集まるデッキの庇です。
ただでさえ薄くて作りにくいのに
庇の長さがバラバラで
でも先端は同じ寸法にして下さいと
図面に書いてしまっているので
大工さんには
本当にご苦労をお掛け致しましたが
おかげさまで
いらっしゃる業者の方々が
『すごい仕事だね』と
顎を触って感心なさるくらいですので
息子さに自慢していただきたいと思います。
庇ができたので
つくっておいて頂いたスチールサッシが
雪を載せて届きます。
現場は準防火地域といって
火災時に20分間火に耐え得る窓をつけなさい
という地域です。
今の日本では
既製品で
網の入っていないガラスで
大きな一枚ガラス窓の入手は困難ですので
20分間耐えるように
製作せねばなりません。
既製品に比べると当然高くつきますが
せっかくの景色が
網に邪魔されては困ります。
ここは予算をふるところ
背に腹は変えられぬわけです。
1月の寒波の中
大工さんからしたら
建築士のエゴで…と
ここからの寒い風に
大変ご迷惑をお掛け致しましたが
これで落着です。
庇をつくり終えた大工さんは
中に戻って
階段に着手されており
手品のように浮いていた
階段が
次の日にはできていて
仕事の早さに衝撃を受けましたが
子供達が登ってしまうので
余韻に浸る時間もなく、鉄骨工事に移ります。
鉄骨部分のデザインは
ご主人さんのイメージを
建築士が図面にしただけで
こんな楽しい階段になる。
毎回毎回
お施主さんのイメージ力に感心させらるのですが
イメージを形にできるということが
設計事務所のいいところだと
しみじみと思ったりします。
現場はいよいよ仕上げへと。
外壁は
ガルバとモルタルとウエスタンレッドシダーの
トリプル仕上げです。
板金屋さんがガルバを貼って
左官屋さんが
モルタルを押さえ
大工さんが
木板を貼ると
これぞご夫婦
共通のツボである
トリプルカラーの完成です。
内部の仕上げは
フェザーフィール
といって
左官屋さんがコテで押さえる漆喰ではなく
塗装屋さんがローラーで塗る漆喰でございます。
コテで押さえるような力強さではなく
ふんわりとした優しい仕上がりが
お好きな方向けの完全自然素材です。
色粉も自然素材なので木の色とも良くあって
調湿もして燃えにくく
何と言っても
光の反射が優しい
天井と壁が仕上がって
設備がつくと
完成は目前です。
納品直前の
変更でも嫌な顔1つせず
対応して下さったキッチン屋さんも
全部の照明の位置を一緒に考えて下さった電気屋さんも
『みんなが良い仕事するもんだから、自分だって負けてられない』
『安藤さんじゃなくて施主さんのためですからね!』
なんて心がほっこりする嬉しいことを
おっしゃってくれるものですから
設計士は
最後まで現場へ走り続けることができ
みんなが集まる場所を
丁寧に考えることができるんです。
『寝ながら星がみれるんですよ』とか
こんなの飾りました』とか
住み手ならではの
素敵な日常のご報告を頂き
心から嬉しく思います。
これからも
4世代で仲良く暮らして頂ければと思います。
お手伝いさせて頂き
ありがとうございました。